越前大野シャレットワークショップ
2010年(社)日本建築学会大会(北陸)記念行事
学生と地域との連携によるシャレットワークショップ
−越前大野のまちづくりデザインを考える−
福井県大野市 御清水(おしょうず)
大野市は福井県の東部に位置し、人口約3万4千人の城下町都市です。1580年金森長近により天守閣が築かれたことに始まり、碁盤目状に街路が構成され、寺社地が町を取り囲んでいます。また南北に用水路や背割り水路が走り、地下水が豊富で清水が各地で湧き上がり、水の町として知られています。このように優れた都市設計により形成された市街地は430年前と大差なく保たれてきています。しかし、昨今の中心市街地の居住者や店舗の減少、空き家・空き地の増加を見ると、それが上手く活かされているとは言いがたい状況にあります。
本シャレットワークショップでは、大野市の中心市街地である城下町地区(約87ha)を対象に、この固有の都市形態・都市骨格を活かし、大野市の活性化につながるような将来像を、全国から集まった学生と地域が連携し、地域の方々や専門家と討論しながら実践的な計画・デザインを行い、地域に提案します。
2010年9月1日(水)―1日目― 全国の建築学生が大野に集合!猛暑の中、まちを歩きます。
福井県福井市のJR福井駅に全国の建築・都市計画系の学生37名が集まりました。南は九州大学、北は弘前大学の、意欲ある若者たちです。福井駅で受付を済ませ、JR越美北線で福井駅から越前大野駅に向かいます。
越前大野駅に到着すると、そこは風のない盆地の大野市、猛暑が学生たちを襲います。作業会場の「多田記念大野有終会館」に向かい、ガイダンスを受けました。
受付の様子 ガイダンスの様子
その後、学生たちはいくつかのグループに分かれて、講師や大野市、地元団体の方がグループを引率し、重要なポイント毎に解説(レクチャ1)をしながら、約2時間のまち歩きを行いました。寺町、工場跡地、商店街、名水スポットの御清水など、城下町地区の名所を巡り、学生たちは写真撮影やメモをとるなどして、まちの印象を熱心に記録していました。
まちあるきの様子
作業会場に戻り、まち歩きのグループ毎にディスカッションをしながら、まちの印象や課題を模造紙にまとめ、講師たちに発表しました。限られた時間の中で、切羽詰まりながらもまとめた模造紙を元に自分たちが感じた越前大野のまちの姿を説明し、講師たちから質疑などの意見をもらい、ディスカッションを行いました。
グループワークの様子 まちの印象発表の様子
発表が終わると、すっかり夜になり、19時から同じ会館内の会場で、ウェルカムパーティーです。学生と講師・スタッフのほか、大野市職員の方も席に混じり、食事をしながら懇親を深めます。時間が経つと、恒例行事?の学生の自己紹介タイムです。大学ごとに舞台に上がって、自己紹介や意気込みを主張し、また笑いをとりにいく学生などもいて、大いに盛り上がりました。
懇親会での学生の自己紹介 懇親会の様子
2010年9月2日(木)―2日目― レクチャの後は、提案テーマのグループ毎にまちへ調査だ!
翌朝9時に作業場に集合し、レクチャ2(アーバンデザイン特論:明治大学・小林教授)では、アーバンデザインの概要およびシャレットワークショップで考えるべきポイントを解説しました。レクチャ3(大野市の歴史:大野市史編さん室・加藤氏)では、越前大野の地理的概要と歴史的変遷の解説を行いました。レクチャ4(越前大野の都市デザイン:福井大学・野嶋教授)では、越前大野のアーバンデザインを解説し、今後の課題として、旧市街地のデザイン、旧市街地周辺のデザインをそれぞれ問題提起しました。レクチャ5(大野市の都市計画:大野市都市計画課)は、大野市が取り組んできたハード整備事業(街なみ環境整備事業など)や都市計画の説明を行い、学生たちは連続するレクチャーにも関わらず、真剣に集中して聞き入っていました。
レクチャの様子
レクチャを終え、グループ編成では、まち歩きとレクチャを踏まえ、7テーマを設定し、可能な限り学生の希望を募りグループ編成を行いました。人数が偏ったり、同じ大学が固まったりしないよう、バランスのとれたグループにするのには調整も必要です。
グループ編成の様子
提案グループが決まり、以降は各自のグループ作業がスケジュールの中心になります。まちへ出て、テーマに則した詳細な現地調査、市民への任意のヒアリング調査を行います。その後、作業会場に集合し、学生たちは提案テーマのコンセプトや課題などを模造紙に整理しました。
まち歩き調査(織物工場見学) グループ作業の様子
まとめた模造紙を用いて、グループ毎に発表し、講師による指導・講評を受けます。その後、指導を踏まえた提案の検討をグループ毎に行い、作業は夜遅くまで続きました。
提案アイデア発表の様子 講師による指導の様子
2010年9月3日(金)―3日目― 市民公開中間発表会に向けて本格化!慌ただしくも作業は進む
グループ作業では、前日に引き続きグループごとにディスカッションや作業を行い、同時に夜に行われる中間発表会を見据え、徐々にデジタルデータ化を図っていきます。
グループ作業の様子
グループ発表・エスキス指導では、パワーポイントおよび模造紙を用いた提案の骨子・コンセプトの検証に重点を置いたグループごとの発表および講師による指導を行いました。その後は、学生たちは随時、グループ作業を行い、中間発表会に向けて必死に発表資料を作成していました。
エスキス指導の様子
市民公開中間発表会(市民討論)では、屋外発表会場(越前おおの結ステーション内「輝センター」)に場所を移して、グループ毎にPPTを用いたプレゼンテーションを行いました。発表後は市民・市職員との意見交換を行い、学生のアイデアや大野市のまちづくりについて議論を行いました。中には「実現性がない、学生に大野に住みたいという熱意が感じられない」などの厳しい意見も出ました。それらの意見を踏まえ、学生たちは残りの2日間で提案を仕上げていきます。
市民公開中間発表会の様子
2010年9月4日(土)―4日目― 徐々に緊迫化した空気の中、学生の作業と講師の指導が続く!
最終発表会の前日ということもあり、グループ作業中心のスケジュールで、緊迫した空気も漂い始めました。パソコンに向かう学生が増え、また模型制作をする班も出始めるなど、学生たちは役割分担を決め、集中して作業を行います。また、適宜講師によるエスキスチェックも行われました。
グループ作業の様子
発表・ディスカッションでは、学生たちがPPTおよび模造紙、スタディ模型を用いた提案の詳細なデザインや提案を実現化させる仕組みに重点を置いた発表を行い、それに対して講師による指導が行われました。
グループ発表の様子 講師によるエスキス指導の様子
その後も、グループ作業、適宜エスキスチェックを行い、最終発表を見据えた、プレゼンテーション制作作業(プレゼンボード、PPT、模型制作及び関連する図や資料の作成)を行い、作業は朝まで続きました。
グループ作業の様子
2010年9月5日(日)―5日目― 今日が最後!これまでの集大成の成果を市民に向けて提案。
グループ作業は、前日に引き続き、学生たちは徹夜(適宜仮眠)での作業でした。眠い目をこすりながらPCで作業をする学生や締切までに終わるかどうか不安になりながら模型を製作する学生、シャレットワークショップならではの空気感です。午後から始まる最終発表会に向け、作業は続きます。
グループ作業の様子 模型制作の様子
午後から、市民公開による最終成果発表会(学生と地域との連携によるシャレットワークショップ〜越前大野のまちづくりデザインを考える〜最終成果発表会)です。模型およびプレゼンテーションパネルは、発表会会場(多田記念大野有終会館)に展示し、グループの発表毎にPPTと模型を用いてプレゼンテーションを行いました。
発表会場の様子
発表を待つ班は、ギリギリまで発表練習を行っていました。他班が発表している間も、自分たちの順番が来るまでギリギリまで調整して、あとは本番勝負です。
発表練習をする町家アート班 発表をする全体計画班
質疑に答える水の全体計画班 質疑に答える工場跡地班
発表をする河川と生活班 質疑の答える町家集住班
質疑を聞く町家若者居住班 質疑に答える旧Fマート班
発表後は、提案に対する市民とのディスカッションを行い、学生たちも真剣に質問に答える姿がありました。中では、模型を囲んだディスカッションを行い、「ここはどうなっているの?」などの細かな質問などもあり、熱いディスカッションが行われました。
市民からの質疑の様子 模型を囲んだディスカッション
最後に、学生・講師全員が前に出て、大野市長や講師たちから総評を踏まえたコメントをもらいました。最後は学生、講師、スタッフ関係者、発表会に参加した市民全員で記念撮影を行い、シャレットワークショップは無事に終了しました。
大野市長の総評を聞く学生たち 前座に出る学生と講師たち
全員での記念撮影
夜には、作業場と同じ建物の和室で、懇親会を行いました。学生たちと講師、スタッフ、関係者で盛り上がった議論を交わし、終盤には、近年恒例行事となっている修了証書授与で、学生たちは講師たちから1人ずつ修了証書を受取り、夜遅くまで親睦を深め、ネットワークを固めた。
懇親会の様子 修了証書授与の様子
「学生と地域との連携によるシャレットワークショップ ―越前大野のまちづくりデザインを考える―」は、参加してくれた建築・都市計画系の学生、(社)日本建築学会都市計画本委員会都市計画・デザイン教育小委員会を中心とした講師陣、スタッフ、そして何よりも大野市を始めとした地元の方々の多大なご協力とご支援があって、無事に成功となりました。ここに感謝とお礼を申し上げます。
学生のみなさんも本当にお疲れさまでした。
(社)日本建築学会都市計画本委員会都市計画・デザイン教育小委員会
特定非営利活動法人まちづくりデザインサポート
文責:泉山塁威/NPO法人まちづくりデザインサポート