姫路市のJR姫路駅の周辺地区はもともと播磨地域の社会経済活動の中心地ですが、JR各線や貨物ヤードが地上面を通っていたため、長い間南北の交通の流れが妨げられてきました。しかし、最近、「JR山陽本線等姫路駅付近連続立体交差事業」などの面的開発が実施され、平成18年にはJR山陽本線の高架切替えが完了し、着実に姫路駅周辺が様変わりしようとしています。特に世界遺産である姫路城を望める北側の駅前広場では、現駅ビルが移転した後のスペースを利用し、円滑な交通動線・地下街の活性化などを可能にする新しい駅前広場のデザインがすぐにも求められています。
現在、「市役所の原案」、「商工会議所の案」、「姫路市議会の創夢会の案」など、市内の様々な団体からアイデアが提案され、市民や行政におる活発な議論と合意形成が待たれている状況です。このシャレットワークショップは、専門家・市民・全国から公募した学生たちが一堂に会し、地域の市民グループによる熱心なヒヤリングから得られた様々な意見をもとに、このテーマに取り組み、4日間集中的に議論して実践的なデザインを提案するために開催されました。
2008年11月21日(金) いよいよシャレットワークショップの始まり。まずは街を歩きます。 |
全国から集まった学生たちが、12時半にJR姫路駅に集合し、初めて顔合わせをしました。遠くは秋田県から、 近くは兵庫県立大学の学生まで、総勢28名の意欲のある若者が集まりました。 最初は、姫路の街あるきを して、対象地域の状況を正確に把握することが大事です。駅前から姫路城方面に向けて歩き、「イーグレ姫 路」の屋上からお城を望みました。それから、15時に姫路市庁舎を訪問し、市長や市の職員の方から現在市 が進めている駅前の整備の方針について伺いました。 その夜は、18時から市内の梅澤糧穀(豆の王国)で、姫路商工会議所の案、姫路市議会の創夢会の案の 説明を聞きました。同じ姫路駅前の整備の方法にしても、市内からいろいろなアイデアが出されていることを理 解しました。あまり時間はありませんが、今まで出ているアイデアの重要な部分は十分生かされていくべきなの で、詳しく理解することが重要です。 その後は、待望の「歓迎懇親会」となりました。おいしいお料理とお酒で、すっかり昼間の疲れも忘れ、学生同 士の自己紹介などが夜遅くまで続きました。 2008年11月22日(土) 様々な現地情報を集めて、課題を探ろう 今日は、朝9時に県立大学に集合して小林正美先生によるアーバンデザインの講義を受け、その後、お城の 近くを歩いて、城郭研究センターに行きました。ここは、全国でも珍しくお城に関する情報を集めている研究所 です。室長の上田さんに「姫路の都心形成」という貴重なまちづくりの歴史のお話を伺いました。姫路の都市 計画の中では、駅前の整備が、最後に残された、しかも最も重要な課題であるということが良く分かりました。 駅前広場に面したビルの街並みのデザインガイドラインも重要なポイントであるということです。 午後3時からは、市民との直接対話の時間です。11月に行った市民からのヒヤリング結果を模造紙やポストイ ットにたくさん書き込まれています。この中から、キーとなるような言葉や課題を拾い出し、重要な情報として構 造付けることが重要な作業です。特に、建築や都市計画系の人間は抽象的な概念を具体的な空間像とし て示すことが重要なので、一般の市民の方々が何を問題にしているかを言葉としてまず把握することは重要な インプットであるといえます。 その後、グループ別のディスカッションを行い、夜の19時からは、第1回目の中間発表を行いました。あまり十分 に話し合いをする時間がなかったので、まずはあたりをつける位のつもりで、各班の方向性を発表しました。現 状の課題を抽出し、それをどのように具体的な形で解いていくかということを、おぼろげながらイメージしながらの 発表です。どの班も、大きな方向性としては間違っていなさそうだということで、明日に向かって、更に各々のテ ーマを堀下げることとしました。 2008年11月23日(日) いよいよ解答のイメージを具体的な形にする時だ 今日は、朝から大学に集合し、街あるきをする班やディスカッションをする班など様々です。学生たちの睡眠時 間も平均3〜4時間になっており、だいぶ疲れも見えるようになってきました。午後2時からは最後の中間発表を 行いました。市内から、関心の高い市民の方も来られ、大手前通りの将来のあり方などについて、活発な意 見交換がありました。A班は全体を広域的に捉え、主に大手前通りの再生計画を担当することになりました。 B班、C班、D班はそれぞれ異なった視点から、駅前広場のあり方を探っています。大胆な考え方も飛び出し てきたので、本当に最後に形になるのかはかなり不安部分を残しました。 この後は、もう死に物狂いで、イメージを形にするしかあり得ません。お互いどのような表現スキルがあるか分か らない中で、共同作業をすることはストレスも大きいものです。それでも、同じ日本語を話しているのだから、コ ミュニケーションが取れない訳はないので、何とか役割分担をして頑張るしかありません。いよいよシャレットワー クショップも山場となってきました。 2008年11月24日(月) 成果を分かりやすく、公開の場で発表する いよいよ、今日は成果を発表する日です。NPOスローソサエティーの方々は、イーグレ姫路の会場で、発表の ためのセッティングに追われていました。学生たちも、夜明けにようやく模型の写真をとることができ、時間の限り パワーポイントのデータを編集することに集中しました。 会場の明るさが気になっていたのですが、あいにくにも朝から雨天だったので、光の問題は解決しました。それに しても、こんなに天井の高い場所で発表できるなんて、学生たちにとっては、一生の間でもめったにないチャンス だったのかもしれません。ケーブルテレビのカメラも入っていました。 市民の方々からも、バリアーフリーや人の流れについて、厳しいご意見を多く頂きました。また、大手前通りを公 園化する将来イメージについては、比較的大きな反響を得たようでした。関西学院大学の岡絵理子先生も 連日駆けつけてくださり、貴重なコメントをくださいました。学生たちは応戦にたじたじ。 最後は、市の職員の方々、日建設計の方々にも貴重なコメントをいただき、普段同席することのないような 方々を横つなぎに出来たことの意味も大きかったと思われます。 本当にお疲れ様でした。 |