シャレットワークショップについて
シャレット(Charrette)の意味
「シャレット」という言葉の原義は、フランス語で荷馬車という意味です。パリには19世紀に設立され、350年にわたって古典建築の設計手法を教育していたエコール・デ・ボザールという美術学校がありました。ボザール校は、水彩絵具で薄い色を重ね塗りする立面図や断面図の画法の教育が特に有名ですが、多くの学生たちは設計課題の提出日になると、荷馬車に図面を積み込み、学校に駆けつけて来ることが通常であったので、次第に「シャレット」という言葉は、短い時間に駆け込む(集中する)というような意味に変わってきたのです。荷馬車と建築のデザインは一見無関係に思われますが、「短期間に集中する」というキーワードで結ばれていたのでした。
今でも、デザイン系の学生たちは、締め切り前に理想の仕上がりを求めて徹夜をすることが多いですが、これも広い意味では、個人的なシャレットを行っていることになります。
現在も建築の設計教育をおこなっているエコール・デ・ボザール校の正門
シャレットワークショップの意味
シャレットワークショップは、欧米の都市デザインやまちづくりで多く実施されているワークショップの形式です。都市デザインやまちづくりでは、合意形成のプロセスにおいて、建築に限らず、都市計画家、交通の専門家、ランドスケープデザイナー、行政担当者など様々なジャンルの専門性が問われることが少なくありません。そこで、これらの多忙な専門家を一同に集め、短期間に集中して課題を探り、具体的な解決法を探ることが必要になってきたのです。アメリカで80年代から始まったニューアーバニズムの運動でも、このワークショップの形式が多く使われ、新しい居住コミュニティー計画のあり方が探られてきました。
我が国では、まだこの形式のワークショップはあまり普及していませんが、都市デザインやまちづくりは個体の建物のデザインとは違うため、もはやコルビュジェのような個人の建築家の才能で進めることにはリスクがあることが明白になってきました。そのため、出来るだけ多くの専門家による複眼的な視線で、地域の課題を探り、その解決法を提案することが、今後ますます重要になると思われているのです。
NPOまちづくりデザインサポートと日本建築学会住まい・まちづくり支援建築会議(旧:都市計画教育小委員会、都市計画・デザイン教育小委員会)がこのシャレットワークショップを推進している主な理由は、将来的に、大学を含む全国レベルの諸専門団体による「まちづくりデザインを支援するネットワーク」の活動拠点となるプラットフォームを確立して、まちづくりデザイン支援活動を実施できる人材の育成およびそのプログラムの開発を目指すことにあります。各々の地域で繰り広げられているまちづくりデザインをシャレットワークショップという形で支援し、まちづくりの動きに弾みをつけるのと同時に、将来まちづくりを担う人材を育てていくことが大きなポイントとなっています。